ビジュアル英文解釈
Tue, 02 Nov 2021 23:18:55 JST (1115d)
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概要
- 英文解釈教室、基本英文700選、新・英文法頻出問題演習などと並ぶ、伊藤和夫師の代表的著作の一つ。
- 初期は「駿台レクチャー叢書」で、ハードカバーであった。
- 予備校講師としてのキャリアの比較的晩年に執筆された。
特徴
- 英語のひとつひとつの文を文法的に分析・構文把握するために必要な知識・基本的な考え方を紹介しつつ、実際の中・長文で実践していく参考書。
- 『英文解釈教室』とともに、同種の参考書の、いってみればタネ本のひとつである。
- 入不二(1997)*1によると、まず体系を示してそれを習得し英文に適用させられるようにしたのが『英文解釈教室』で、体系を示すのでなく英文を読む際の基本姿勢を教えることに徹したのが『ビジュアル英文解釈』である。
- 言語を実践する言語主体の立場である「主体的立場」(時枝誠記)に立って、文構造の分析を結果として示すのではなく、文頭から文末に向けて、どのように文法知識を用いながら英文を理解すべきかを示している。
- 当時、『実況中継シリーズ』(語学春秋社)などで台頭してきた講義型参考書を意識して、入不二師のいう「『現場性』の取り込み」がなされている。
- 各回、まず「焦点」という項目で初めて出てくる事項の解説を行い、その後練習問題が掲載され、その練習問題の検討を「研究」で行い、大意を示す
- ただし実際は和訳例といっていい代物であり、「大意」としているのは伊藤師のこだわりである。
- その上で、複数の生徒と伊藤和夫師との対話調の文章が続いてその回の注意点や補足・発展的話題などを検討していく、という構成になっている。
- 久山道彦師によると、伊藤師はソクラテスの弁証法を意識してこの対話篇を記したそうだ。西洋哲学科を卒業し、プラトンの著作に親しんでいた伊藤師だからこそ著せた一冊と言えるだろう。
- 各回、まず「焦点」という項目で初めて出てくる事項の解説を行い、その後練習問題が掲載され、その練習問題の検討を「研究」で行い、大意を示す
- なお、『英文解釈教室』と違い隅々まで網羅してないという意味で「基本姿勢を教えることに徹した」とあるだけで、この本で大学入試に必要なことはどのレベルの大学であれきちんと習得できる。
- これだけ参考書がでまわってもなお、構文把握における頭の働かせかたを教えてくれる本は、多くはない。
- 注意点として、本書は精読時の構文把握のやり方を示したものであり、速読が重視される傾向のある現在の受験英語の対策にそのまま適用するのは困難である。
- 伊藤師によると、英文解釈教室はかいつまんでやってもそれなりに効果があるが、ビジュアル英文解釈はpart1の頭からやらないと効果が薄いとのこと。partⅡまで仕上げれば(当時の出題傾向の)東大にも入れるとのこと。(伊藤和夫の英語学習法、59頁)
- なお、『英文解釈教室』と本書の過渡期的著作に『ルールとパターンの英文解釈』(旺文社、1994年/研究社、2018年(新版))があり、本書よりも「ルール」が二つ多い。
- 元々は「旺文社大学受験ラジオ講座」および、そのカセットテープ教材(ラ講テープライブラリー)で、書籍化自体は本書よりも遅い。
- ちなみに、新版は伊藤師の教え子である翻訳家の越前敏弥氏の『文芸翻訳教室』と同日発売で、同氏も『ルールとパターンの英文解釈』を勧めている。
PART Ⅰ
PART Ⅱ
テーマ別英文読解教室と英語長文読解教室はこの本と接続関係にある。また、この2冊の代わりになる教材として英文和訳演習上級編と英語総合問題演習上級編と英語要旨大意問題演習が挙げられており、5冊のうちの2冊をやればよいとのことだ。(伊藤和夫の英語学習法、86頁)
『伊藤の ルールとパターンの英文解釈(ラ講テープライブラリー)』(旺文社「大学受験ラジオ講座TEXT編集部」編/指導:ラ講講師 伊藤和夫 旺文社、1984年)
『伊藤和夫の ルールとパターンの英文解釈(大学受験JランドBOOK)』(旺文社、1994年3月28日)
『伊藤和夫の ルールとパターンの英文解釈(大学受験JランドBOOK)』(旺文社/㈱デジタルパブリッシングサービス、2004年6月20日(オンデマンド版))
『[新版] ルールとパターンの英文解釈』(研究社、2018年4月19日)
- 1983年4月~1984年1月まで文化放送とラジオ短波をキーステーションに旺文社の提供で放送されていた「旺文社大学受験ラジオ講座」(ラ講)の「伊藤の ルールとパターンの英文解釈」を文字起こししたもの。
- 放送終了後すぐに音声教材「ラ講テープライブラリー 伊藤の ルールとパターンの英文解釈」というテキスト1冊、カセットテープ20巻の音声教材として出版さた。
- 書籍化されたのは放送終了の10年後の1994年3月。
- 本放送とラ講テープライブラリーでは「比較」が一切扱われていなかったが、書籍化された時に、翌年放送の「伊藤のルールとパターンの英文解釈演習」という応用篇で比較を扱った部分を差し替えて(つまり、元の講座は一つ減ったが、復習的内容だったので支障はなかった)網羅性を高くして出版された。
- 書籍版には、放送当時、別冊解答集にあった練習問題「For Further Study」は全部カットされた。
- For Further Studyでは、講義で扱った文章の中から特にポイントになる部分を復習できるように2~3行(時に5~6行)の英文解釈の問題と解答が2~3題づつあった。
- 研究社の新版でもカットされている。
- 伊藤和夫の「ルールとパターン」というとほとんどの人が「ビジュアル英文解釈」を思い浮かべるが、ルールとパターンという考え方はこちらの方がオリジナル。
- パターンについてはどちらも変わらない。
- しかし、ルールの方は「ビジュアル英文解釈」は11個、本書では13個となっている。
- 本書における「等位接続詞のあとのコンマについてのルール」「長い句の扱い方についてのルール」がビジュアルでは削られている。
- 英語が苦手で時間がない受験生は「ビジュアル英文解釈」と同じくらいのレベルからスタートして、大体同じくらいの到達点に1冊で到達できる。
- 以上より、ビジュアルよりこれをやるべきという人もいる。
参考文献
- 入不二基義(1997)「二つの頂点―『英文解釈教室』と『ビジュアル英文解釈』―」, 『現代英語教育』34(2)1997年5月号, pp.12-17, 1997-05, 研究社.
*1 入不二基義(1997)「二つの頂点―『英文解釈教室』と『ビジュアル英文解釈』―>http://www.asyura2.com/0403/bd35/msg/879.html」, 『現代英語教育』34(2), pp.12-17, 1997-05, 研究社.