概要
- かつては、『基本英文700選』『英語構文詳解?』とともに「伊藤和夫の三種の神器」と呼ばれていた。
- 今でも本書を取り敢えず手に取る駿台生は多い。入学時の三冊無料キャンペーン対象でもあるので、悩んだら本書にして損はない。
- 2001年にPART Ⅰの文法篇とPART Ⅱの熟語篇の分冊版が刊行された。
- 1972年(初版)、1979年(増補改訂版)、1991年(新版)、2001年1月17日(新装版,分冊版)。
- 「新・英頻」併用 英文法問題集 1992年1月10日
特徴
- 通称、“英頻”または“文頻”。
- 当初は、“文標”(英文法標準問題精講)と対比的に“文頻”と呼ばれていたが、次第に、“英頻”の方が主流となっていった。
- なお、“英頻”は本書が元祖であり、アチラは“桐原の英頻”である。
- 刊行当初は、当時、英文法問題集の双璧と言われていた、原仙作著『英文法標準問題精講』(旺文社、1966年)、森一郎著『試験にでる英文法』(青春出版社、1971年)の二冊に次ぐ存在であった。(開成高校東大合格者,1979)*2
- 1980年代初頭から中頃にかけては、英文法問題集人気No.1であった。
- その後は、
本書のパクリ本と言われる上垣暁雄編著『英語頻出問題総演習』(桐原書店、1985年)が学校採用を中心にシェアを広げた。
- 「その「英頻」だが、さすがの伊藤和夫も上垣の快著『即戦ゼミ③ 英語頻出問題総演習』(桐原書店、1985)には勝てなかった。」(江利川,2011)*3
- 哲学者・千葉雅也氏も「ボロボロになるまでやった」 と語っている。
- ネクステ、アプグレ、ヴィンテージ、
タケオ科ULTIMATEなど、いわゆる“英頻型演習書”の元祖である。
- この形式の参考書が何一つなかった時代に、「大学入試英文法問題事典」を意図して伊藤師が編集したもの。
- 当時はコンピュータがまだ身近ではない時分に、伊藤師がカードを用い入試問題を地道に採集、その分類・整理を経て作られた。
- 伊藤氏は公称三百万部を売った『英頻』に絶対の自信を持っていたようで、「次の改訂の時、僕が『英頻』の文法編に手を入れたいと言ったら、ボケた証拠だ。編集部でやめさせてくれ」と、冗談混じりに話していたそうです。(原文ママ)*4
逆に言うと、熟語篇には手を入れる余地があったということであろうか。
- 英文解釈教室やビジュアル英文解釈ではきちんと解説する伊藤和夫師も、事典的性質をもつ本書では問題量の関係もあり、説明は最小限に留められているので、ある程度出来る人の確認用といった趣が強い。
- 暗記では無く一から発展させると、前書きには書いてあるが、そんなことは全くない。
- どの位簡潔かというと、そっけなく文法用語が書いてあるだけである。ないと言っても過言では無いくらいでもある。テーマと訳のみの問題がほとんど。
- 説明が最小限というのは、この当時の参考書としては、決して珍しいものではない。その分、それなりに余白があるので、分からない箇所は自分で調べて解説を書き込んでいくのもアリか。
- もちろん高卒校内生であれば英文法Sの授業で第1文型から英文法を教わるので、文字通り併用すれば良いだけである。
- 解説が充実しているなどと言っていつまでもネクステにこだわる人がいるが、ネクステを1周したぐらいではこの教材のレベルには達しない。
- 久山道彦師が特に勧めており、本書と対比させる形で、フォレストやネクステをおもちゃといっている。無機質で硬質な本書と比べればたしかに、それらは説明がこの書に比べれば多い点で幼稚とはいえるかもしれない。
- ただ注意したいのは、久山師は解説の量から幼稚と言っているのではなく、難関大の英文を読み解くためには本書並みの文法力が必要だと言っているのである。このレベルの英文法が定着してこそ、「読むための英文法」たる構文の理解が可能ということである。
- 文法問題対策の第一歩としてならフォレストやネクステでも問題ないが、国立受験生にとって文法はあくまで読解の基礎のために取り組むものである。と同時に、早慶レベルの文法問題には本書だけでも不足と言える。
- ちなみに久山師曰く「高校三年に進学するまでに終わらせるべき教材」とのこと。これが難しく歯が立たないならば、高橋善昭師らが著した『基礎徹底 そこが知りたい英文法』から始めると良いそうだ。
- この教材の効果を過剰に持ち上げすぎではないかという声もある。それ故、高卒生ならさっさと終わらせて次の段階に進むべきであろう。
- ちなみに久山師は、この教材を完璧にしたあとにやるべき教材として『「新・英頻」併用 英文法問題集』を挙げている。
- さらに大島保彦師によると「インプットの為の教材。夏頃に卒業すべきで、最後までこれではダメ。ランダム型のものもやらねばいけない」とのこと。
- 勿論、伊藤師は本書の先のことも考えており、ランダム型の『「新・英頻」併用 英文法問題集』もある。
- 大島師の冬期講座「英語アウトプット200+α」はそのための存在とも言える。
- 声優の浅野真澄も使っていた。(一騎当千GGR第11回放送)
- かつて、仲本浩喜師の『大学入試攻略 英文法TOP100』(駿台文庫)が、駿台文庫の本で初めて本書を(瞬間的に)抜くほどの売り上げを記録したことで、講習会で師のオリジナル講座が設置されることになった。(仲本師ツイッターより)
PART Ⅰ 文法篇
- 文法をストレートかつコンパクトにまとめてあるので、基本的な文法事項を理解した後の仕上げの段階で使うと、一通りの文法知識が確認、整理できる。
- 解説が少ないので、受験勉強の初期の段階では使えない。
- 知識確認にはよいが、入試の文法問題の演習書としては素直過ぎる。
PART Ⅱ 熟語篇
- 問題形式になっているため頭に入りやすい。
- 熟語が同じパターンで分類され、系統的に並んでいる。
- 前置詞に関する勘が養える。
- 前置詞はアルファベット順、前置詞以外も系統的に並んでいるので、前後の問題から答えがわかってしまう。
- 解説には役立つことが書いてある。
- 数が少ないのが難点で、早慶上智レベルの入試には対応できない。
「新・英頻」併用 英文法問題集
- 上記よりレベルの高い問題がランダムに並んでいる。
- レベル1〜4の四段階構成。
- レベル4が解けるようになると文法問題で不安はないとのこと。
- 巻末にアセスメント・マップがあり、誤答番号を塗り潰すとどの分野が弱いかわかるようになっている。
- 本編に比してなぜかマイナーな存在であるが、久山道彦師推薦である。
1997年5月26日産経新聞朝刊「受験のカリスマ」5
開成高校東大合格者共著『東大突破作戦コーチ』(秋元書房、1979年8月)
江利川春雄(2011).『受験英語と日本人─入試問題と参考書からみる英語学習史』, p.226, 2011, 研究社.
1997年5月26日産経新聞朝刊「受験のカリスマ」5