教養部 のバックアップ(No.35)


 

教養部 Edit

 教養部は、学部1-2年次に配置される教養課程(一般教育)を担当する学内組織である。

  • 学部と同様に、教養部に所属する専任教授によって構成される「教授会」である『教養部教授会』が置かれる。
    • ここで、教養部の教員採用からカリキュラムの作成まで、各種の意思決定が行われる。
    • 学部に準じた独立性と、意思決定の権限を有するため、学内外で学部とほぼ同等の扱いを受ける。
    • 部局表では、国内に存在する全ての「学部」に3桁の番号が割り振られているが、一番はじめとなる「001番」は「教養部」である。
  • 1992年以降、教養部を廃止する大学が増え、かわって学部が4年制(6年制)一貫教育を行うようになった。
  • 教養部が行ってきた教養教育は大幅に縮減され、共通教育科目・外国語科目・健康スポーツ科目などに改められた。
    一方で、専門教育の半年から1年程度の前倒しが行われるカリキュラム改正が相次いだ。
  • また、学部の入試問題は、各学部に所属する教員ではなく、教養部に所属する教員により作成されるケースが多く、学部入試問題の作成の任を負うという重要な役割を担ってきた。
    一方で教養部は作成せず文学部・理学部などの教員が関連する科目の作問・採点を作成していた大学もあった(大阪大学など)。
  • しかし、「90年代の教養部廃止により、入試問題の作成が困難となっている」との指摘が、大学側からなされるなど、「大学改革」の名の下に進められた、『教養部の解体』による弊害が、近年になって顕在化している[要出典]。
    現在は旧教養部担当教員と学部教員が関連する科目を協働で作問・採点を行っている大学が多い。
  • 教養部を設置する国立大学は最大で33校にのぼった
  • 2001年現在、国立大学で教養部を設置しているのは東京医科歯科大学のみである。
    • 旧制東京医科歯科大学予科理科→新制千葉大学東京医科歯科大学予科→千葉大学文理学部(医学部・歯学部進学課程)→東京医科歯科大学国府台分校→東京医科歯科大学教養部
    • ただし、現在においても東京大学は教養学部(前期課程)、北海道大学は総合教育部で、教養教育が行われている。

大学設置基準の大綱化 Edit

  • 1974年に広島大学が教養部を総合科学部へ改組したのを皮切りに、1991年(平成3年)7月の大学設置基準の大綱化*1*2以降、教養部所属や教養課程担当の教員を他の学部へ移動したり、独立した教養部を4年制の学部へ改組したりする事例が増加した。
  • この時に緩和された規制とは一般教育(教養教育)と専門教育との区分だった。それまで大学では、2年間の「教養教育」、その後の「専門教育」の区分が義務化されていた。大学設置基準の大綱化は、その区分を、かならずしもしなくてもよいとしたのである。
    • 一般教育と専門教育の単位数に関する規定がなくなった。
  • これは決して、教養と専門の区別を「禁止」するものではなかったが、親方(文部省/文科省)にへつらう日本の大学らしく、各大学は雪崩をうって教養部を解体していった(東大の教養学部は例外だろう)。
  • これによって昨今では、教養課程と専門課程をはっきりと区分している大学が減る傾向にある。代わって、一般教育科目と専門教育科目を在学中にいつでも履修できるようにした、いわゆるくさび形教育課程(四年一貫もしくは六年一貫教育課程とも言う)が増えつつある。
  • 例えば、文学関係の教員は文学部へ、憲法を担当していた教員は法学部へ、物理や化学を担当する教員は理学部へ移籍した。
  • また、言語文化学部、総合人間学部などのような独立した部署に改組した。多くの大学では旧教養課程を共通教育などといった名称に変え、必要な単位数を縮減した上で存続させている。そして、専門科目の履修を半年から1年程度前倒しで行われるようになった。
  • これに伴い研究室配属などの時期も4年次から3年次へと前倒しになる大学・学部が増えた。

教養部の後身 Edit

 

 ※昭和38年~昭和43年 国立33大学に教養部を設置*3

 

1 1991年(平成3年)以前に教養部を改組した大学・・・2大学

 広島大学 → 新学部(総合科学部) 〔昭和49年度〕

 岩手大学 → 学芸学部→一般教育部(学内措置)→教養部→新学部(人文社会科学部) 〔昭和52年度〕

 大阪府立大学 総合科学部(1978年設立)

 
平成3年 大学設置基準の大綱化(一般教育科目、専門教育科目等の科目区分の廃止)
 

 大規模大学を中心として11大学では,教養部の教員を資源として新研究科や新学部が設置された。

 

2 1992年度(平成4年度)に教養部を改組した大学・・・2大学
 京都大学 → 新学部(総合人間学部

 神戸大学 → 教育学部改組とあわせて新学部(国際文化学部、発達科学部)

 

3 1993年度(平成5年度)に教養部を改組した大学・・・5大学
 東北大学 → 大学院充実(国際文化研究科、情報科学研究科)

 群馬大学 → 新学部(社会情報学部

 富山大学 → 既設学部の充実(人文学部、理学部)

 名古屋大学 → 新学部(情報文化学部)と大学院充実(人間情報学研究科社会情報学専攻)

 徳島大学 → 既設学部の充実(総合科学部)

 

4 1994年度(平成6年度)に教養部を改組した大学・・・6大学
 宇都宮大学 → 学芸学部→教養部→新学部(国際学部

 千葉大学 → 既設学部の充実(文学部、理学部)と大学院充実(自然科学研究科情報システム科学専攻)

 新潟大学 → 既設学部の充実(人文学部、理学部、工学部

 大阪大学 → 大学院充実(国際公共政策研究科)

 岡山大学 → 新学部(環境理工学部) 工学部土木工学科,農学部,理学部化学科と数学科,教養部の理系の分野を基礎に設置。

 九州大学 → 既設学部の充実(文学部)と大学院充実(比較社会文化研究科、数理学研究科)

 

5 1995年度(平成7年度)に教養部を改組した大学・・・4大学
 埼玉大学 → 既設学部の充実(教養学部、経済学部、理学部、工学部)と大学院充実(理工学研究科環境制御工学専攻)

 信州大学 → 既設学部の充実(人文学部、教育学部、経済学部、理学部、繊維学部)

 静岡大学 → 新学部(情報学部

 鳥取大学 → 既設学部の充実(教育学部、工学部

 

6 1996年度(平成8年度)に教養部を改組した大学・・・7大学
 山形大学 → 既設学部の充実(人文学部、工学部)と大学院充実(工学研究科生体センシング機能工学専攻)

 茨城大学 → 既設学部の充実(人文学部、教育学部、工学部、農学部)

 金沢大学 → 既設学部の充実(文学部、教育学部、法学部経済学部、理学部、薬学部、工学部

 岐阜大学 → 新学部(地域科学部

 山口大学 → 既設学部の充実(教育学部、経済学部工学部、農学部)

 愛媛大学 → 既設学部の充実(法文学部、教育学部、理学部、工学部、農学部)

 佐賀大学 → 教育学部改組とあわせて新学部(文化教育学部

 

7 1997年度(平成9年度)に教養部を改組した大学・・・5大学
 弘前大学 → 廃止(共通教育を全学で担当)、理学部、農学部改組とあわせて新学部(理工学部、農学生命科学部)

 長崎大学 → 一般教養部(1949年) → 教養部(1964年)→ 新学部(環境科学部)(1997年)

 熊本大学 → 既設学部の充実(文学部、教育学部、法学部、理学部)

 鹿児島大学 → 既設学部の充実(法文学部、教育学部、理学部、工学部、農学部、水産学部)

 琉球大学 → 既設学部の充実(法文学部、教育学部)

 

 ※平成18年時点で教養部を置くのは1大学(東京医科歯科大学)。

 

【その他】

 北海道大学 高等教育機能開発総合センター(1995年創設)→高等教育推進機構(全学教育部、総合教育部)2011年度(平成23年度)

 一橋大学 大学院言語社会研究科(1996年)

  • 教養部は1996年に解体された。
  • かつて教養部に所属していた教員は、あらためて学部、より正確には大学院所属に振り分けられた。
    • 一橋は商・経・法・社の四学部だが、形の上ではそれらの学部・大学院に所属しつつ、実質上はたとえば一年生に英語を教えるといった従来の教養教育を受け持つという、奇妙な形の教員ポストが生まれた。*4

 三重大学

  • 教養部はなく、1983年に人文学部が創設される以前は全学の一般教育を担当する教員は教育学部に所属していた。
  • 人文学部ができてからは主として文系の一般教育の教員は人文学部に、理系の一般教育の教員は教育学部に所属し、両学部から関係教員が集まって「一般教育委員会」を作り、そこで一般教育の運営を行っていた。
  • 「設置基準の大綱化」により、三重大学では「共通教育」と呼ばれることになり、一般教育担当教員もそれぞれの学部に分属し、各学部からさまざま分野を専門とする教員が出てきて多様な共通教育の授業を行うことができるようになった。その運営を行うために1996年(平成8年)に全学の「共通教育機構」が発足。
  • 2004年には国立大学の法人化を見据えて、共通教育機構の機能を強化した「共通教育センター」が置かれた。
  • 2014年4月には15名の専任教員から成る三重大学「教養教育機構」が発足し、新しい教養教育のカリキュラムが開始された。
  • 2018年4月からは、「教養教育院」と名称を改め、教養養育の企画運営に専念できる学部相当の部局となった。
  • 2021年(令和4年)4月1日から、教養教育院は組織再編され、「全学共通教育センター」へと改組。

教養課程 Edit

 教養課程(きょうようかてい)とは、大学(学部)で専攻にとらわれず、広く深く学術の基礎を学び人間性を涵養する課程であり、専門課程(せんもんかてい)とは、大学(学部または大学院)で特定の専門分野を学ぶ課程。

 
  • 従前の大学設置基準には、一般教育科目、外国語科目、保健体育科目、基礎教育科目、専門科目の5種が設定されており(基礎教育科目は必ずしも必修ではない)、大学はこの5種に属する授業科目を設定すればよかった。
  • 専門課程とは専門科目の課程であり、教養課程とは専門科目以外の課程のことである。
  • また1960年代後半になると、大学によっては専門科目以外の教育を担当する教養部という組織を設置し、ここに入学後の学生を所属させ、必要単位を充足すると学部へ進む、という形をとったが、この形式をとった場合の、教養部在籍の段階のことも教養課程と呼ぶことがある。
  • 教養課程には、多くの場合、前期の1〜2年間が充てられる。豊かかつ柔軟な人間性の涵養と、学問の世界に踏み込むにあたり広く深い見識を身に付けることで、専門課程や大学院等で学ぶための基本的素養・能力を養うことを目的とする。内容は主に語学(主に外国語、場合によって国語 / 日本語も含む)、論文の書き方やディスカッション手法、自然科学・人文科学・社会科学の各分野の概論や他分野との学際も兼ねた啓蒙的な導入、体育科目、大学での教育研究に必要な知識・技能の基礎演習など、多岐に渡っている。自然科学系統の科目では各種の実験が、人文科学と社会科学ではフィールドワークなどが課せられるケースも多い。また、最近では学部を問わずコンピュータの使い方を学ぶカリキュラムが組まれていることが多い。また、理系の学部では教養課程や共通教育に専門基礎科目が含まれ、学部の履修に必要な数学(主に線形代数学・解析学・確率統計学)・物理学(古典力学・電磁気学など)・化学(一般化学など)・生物学(生化学・分子生物学・細胞生物学など)の基礎科目を履修する。
  • 教養課程は本来こうした素養・能力を養成する目的であったが、多くの学生は興味のない科目を無理矢理取得させられる課程であると認識していた。そのため、現在は基準が改正され、廃止されている。
  • ただし、現在においても東京大学は教養学部(前期課程)、北海道大学は総合教育部で教養教育が行われている。
  • それ以外の大学でも共通教育などの名前に代わって教養教育は行われている。
    • しかしながら、大幅な教養課程の科目が削減されたため、学生が幅広い教養を得る機会が失われた。また、多くの大学では教養教育は教養部の担当から、全学教員の担当に変えられた。
  • 専門課程には、多くの場合、後期の2〜3年間(6年制の学部では4〜5年間)が充てられる。
    • 学部や学科における専攻分野を学び、ほとんどの授業が専門教育科目に充てられる。ゼミナール、卒業研究、卒業論文といった大学における専門教育の基幹となる科目も専門課程に設けられている。教養部の廃止に伴い、専門課程の開始が前倒しにされた。
 

京都大学 全学共通科目

大阪大学 全学共通教育科目(全学共通教育機構 → 大学教育実践センター)

東北大学 全学教育(教育・学生支援部)(全学教育、大学教育研究センター → 高等教育開発推進センター → 高度教養教育・学生支援機構)

名古屋大学 全学教育科目(教養教育院)

北海道大学 全学教育科目(高等教育機能開発総合センター(1995年創設)→高等教育推進機構(全学教育部、総合教育部)2011年度(平成23年度))

九州大学 全学教育科目 → 基幹教育科目(基幹教育院)

一橋大学 全学共通教育科目

神戸大学 全学共通授業科目(大学教育推進機構国際教養教育院)

徳島大学 教養教育(全学共通教育センター → 教養教育院(2016年度))

長崎大学 全学教育 → 教養教育(平成24年度)





*1 1991年(平成3)7月に施行された大学設置基準(日本)の大幅な改正を指し,社会や国民のニーズに迅速に対応可能となるよう大学制度を弾力化・柔軟化するとともに,各大学の自主的な取組みを尊重することによって大学制度全体の変革を促すことを目的とするとされた。
*2 「大綱化」とは大学評価・学位授与機構の英文資料では、deregulationと訳されており、規制緩和である。
*3 学内措置で教養部を設置していた北海道大学を加えないとして、教養部設置は32大学とする数え方もある。
*4 河野真太郎「現代ビジネス」, 『私が一橋大学の教員を辞めた理由〜国立大に翻弄された苦しい日々』, 2019.6.9, 講談社.